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総領事のヒューストン通信 |
ヒューストン、オースチン及びサンアントニオ日本語補習校の
合同授業研究会・意見交換会での山本総領事挨拶
(平成24年6月9日)
在ヒューストン日本国総領事 山本条太
寬仁親王殿下におかれては、さる6日に薨去されましたところ、日本時間14日に御喪儀が行われる運びとなりました。当日、総領事館及び公邸におきましては弔旗・半旗の掲揚を行います。謹んで哀悼の意を表します。
補習校運営への日頃からのご尽力、改めて感謝申し上げます。学校ごとの事情や課題はそれぞれでしょうが、地域を越えた情報交換や意見交換を通じて、問題発見や問題解決が促されることは疑いありません。山岡校長先生始め、今回の企画運営に当たられたヒューストン日本語補習校の皆様に御礼申し上げ、積極的な参加をいただいたオースティン、サンアントニオ両日本語補習校の皆様に敬意を表します。
内外とも改革や制度変更が相次ぎ、海外補習校を巡る状況も変転を重ねています。従来の役割分担だけでは限界が生じています。一層大きな広がりの中からその時々に必要な資源を仰ぐことのできる、資源とは人材、資金、安全、知見、人脈ですけれども、柔軟で幅広いネットワーク作りを進めていく必要がありましょう。本日の研修で得られた問題意識もまた、この場のみに留めては勿体ありません。是非ともこの成果を、外部に向けての情報共有と発信に適した形でとりまとめ、実際に発信をしていく、その具体的な方策を講じるようお願いしたいと思います。
補習校の運営に関わる総領事館の役割についても、従来の本来業務のあり方を捉え直すとともに、より幅広いネットワーク作りをどうお手伝いできるのか、皆様共々模索していかねばなりません。必要な議論との関連で、六つだけ申し上げておきます。
第一に、講師謝金の援助につき、新たな調整作業への対応を引き続きお願いいたします。かねての算出方法変更に続き、対象となる給与範囲の調整、種々追加的な資料作成のお願いに伴い、新たな作業負担が生じていること、良く承知をしております。国として講師謝金援助制度の存続を図る上で、制度の説得力を高めることが一層重要になっています。ある程度画一的で、日本国内との比較でも違和感のない基準や手続の整備を進めねばなりません。万全な会計処理と検証の徹底は、国の施策全般に共通した要請です。同時に外務省は、海外各地の相異なる事情に対応するため、小規模校への支援拡大始め「公平性」の向上も重視しています。これらを総合した、安定的で最適な援助制度の収束を見るには、今暫くのプロセスを経る必要があると思います。現場の声がプロセスに十分に反映されることが好ましく、それを取り次ぐのは在外公館の大切や役割であることを申し添えます。
第二に、国の支援による講師研修について。本年の米国南部地区研修会は、バージニア州ノーフォークで7月20~22日に開催され、テキサスからはオースティン、サンアントニオ、エルパソ各校が参加します。実践型・体験型の研修ですが、研修内容はもとより、州を越えた先生方の関係構築の貴重な契機としても積極的に活用願います。
第三に、児童生徒の安全対策面です。テキサス各当局は相当の治安・災害対応能力を備えていますので、総領事館からの情報は、一般に、危機への対処法そのものというより、どこが情報ソースでどこが対応機関かといった電話帳的な整理が中心となります。個別の事態では、当局への働きかけ始め必要な対応を行っておりますし、物事の性質に応じ範囲を限った情報提供も行っています。児童生徒及びそのご家族の安全には、千差万別の脅威が及び得ます。個別の声掛け、相談を通じて、総領事館の機能を気軽に活用願います。
第四に、安全対策に関連して緊急連絡網について。先般、ヒューストン補習校には緊急電話連絡網のテストランをお願いし、山岡校長先生始め大変真剣に対応いただき、貴重な成果が得られました。テキサス各地には危険情報を即時直接に当局から受信できる仕組みがありますから、緊急電話連絡網の意義が疑われがちかもしれません。安全ネットに過重過大ということはありません。連絡網の整備と訓練を通じて、他人の状況への目配りを自然な基本動作とすることができます。それは、万一の際の安否確認に際し強力な効果を発揮します。オースティン、サンアントニオ両校には、テストランへの参加を検討願えると幸いです。
第五に、教科書とは別に、総領事館にある広報資料を、学習や行事に活用してください。にぽにかという広報用雑誌の、先日の新幹線特集号は現地校にも好評でした。他に色々宣伝用品もあります。広報文化班の担当ですので、お声掛け下さい。
ところでアメリカでは、教科書や授業の内容が当局から問題視されることは考えにくいですが、「コミュニティー」との関係で問題が生じる場合はあります。何らかの兆候がある場合、空振りとなってかまいません、総領事館にご一報願います。
最後第六に、補習校と受入れ現地校始め地元コミュニティーとの関係緊密化に必要な事柄につき、総領事館として決して労を厭いません。テキサスでの日本企業の活躍が地元社会の圧倒的な支持を得ていること、地元に溶け込もうとする日本企業の日々きめ細かな努力の積み重ねの成果であることは、ご承知のとおりです。週一回の補習校の場合、地元や現地校との交流といっても物理的な制約が厳しいかもしれません。日本企業の行う交流行事の一環として、あるいはヒューストンでは文化施設とのつきあいが地元との関係構築上も大切ですが、日系各団体とそれら施設との交流の機会を活用して、補習校についても、地元の支持と信頼と安全を稼ぎ出していくことができると思います。大きな広がりの中で行動を重ねる、オースチンの宇田川先生ご夫妻からは、サンアントニオにそのような流れを作るための、数々のヒントをいただいています。また、例えばダラスでは今、ダルビッシュのレンジャーズ入団や8月の草の根交流サミットの実施といった要因もありますが、その辺り大変上手に対応されています。情報の交換台として接着剤として総領事館はそれなりの役割を果たせますし、是非それを果たしたいと思います。
それではどうぞ、引き続き活発な意見交換をよろしくお願いいたします。