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総領事のヒューストン通信 |
JETRO、ヒューストン日本商工会、総領事館共催
「ブラジル・セミナー」(6月26日)での山本総領事挨拶
在ヒューストン日本国総領事 山本条太
本日は、ジェトロ・サンパウロ事務所の紀井寿雄ディレクターに講演をいただきます。ジェトロ・ヒューストン事務所、ヒューストン日本商工会による企画と共催、商工会からの皆さま多数の御出席に御礼申し上げます。紀井ディレクターには、遠路のお越し、誠にありがとうございます。
ラテンアメリカへのゲートウェーと言えば、まずマイアミですが、ヒューストンも大きな地位を占めています。GHP(Greater Houston Partnership)調べの数字をいくつかご紹介しますと、2011年のヒューストンとラテンアメリカとの貿易額は1097億ドル、対前年比で31.7%増、全米2位です。
ヒューストンに本社を置く企業のうち78社がラテンアメリカ各地に510の支店その他活動拠点を置き、1400以上の当地企業がラテンアメリカとの商取引を行っています。ラテンアメリカ側の会社を見ると、49の企業がヒューストンに79の拠点を置いています。
ヒューストンの港が果たす役割も大きく、海運を通じたラテンアメリカとの貿易額は年1048億ドル、全米一位です。ブッシュ国際空港からの直行便は、中南米カリブ58箇所に就航しています。ヒューストンにある30の外国企業商工会のうち11がラテンアメリカ系です。
ヒューストンを要とするアジア、北米、中南米各市場の連結という発想も、2014年のパナマ運河拡張を待たずに、中国企業や韓国企業の醸し出す日々の実感として、具体化が進んでいます。この春の、中国COSCOと韓国韓進海運の共同事業による釜山・上海―ヒューストンー中南米航路への大型コンテナ船の就航は象徴的な出来事です。
従来、総領事館同士の役割分担で、マイアミはブラジル、ヒューストンはメキシコといった感がありました。確かに当地にとっての最大の貿易パートナーはメキシコが断然一位、常に全貿易額の1割は確保しています。再びGHP調べの2011年の貿易額を見ますと、メキシコが314億ドル、同年のヒューストン全貿易額が2680億ドルでしたから存在感は大きく前年比42%増の伸び率も大きい。
二位がベネズエラで199億ドル、ブラジルは三位で、155億ドル、前年比37.2%増と相当の伸び率です。アメリカの税関区域ごとの統計によると、どうやらブラジルとの貿易でヒューストンが最大の位置を占めるにいたった模様です。ところで中国は118億ドルで第五位、前年比30.8%増です。
メキシコだけでなくブラジル始めラ米各国全般に、一層の注意をヒューストン発で払っていく必要がある、それは中国との関係でも尚更かもしれない、そのようなことを物語る数字です。
中国と申し上げましたが、中国とラテンアメリカ市場との関係は、貿易・投資や物流に、資源確保や外交といった戦略的な要素が重なり合う典型です。その中にヒューストンという地域もまた当然に、複眼的な発想で位置づけられているのだと思います。
昨年、船舶検査を行う中国船級協会が、ヒューストン事務所を開設しました。ヒューストンを巡る中国海運・物流の拡大という要素のみならず、メキシコ湾その他での沖合資源開発への関わりも睨んだ動きと見られ、中国らしい戦略・戦術の一例です。
私共それぞれ、今までのやり方というものがあります。同時に、アジアや中南米という市場を大きくざっくり捉える、その連結点を、ヒューストンでも良いですが、ざっくりとした拡がりの連結点としてダイナミックに捉える、そのような発想を殊更に意識していく必要が高まっていると感じます。
世界地図をカメラを引いて遠目に眺めるのは、ヒューストン駐在員皆様の得意技です。本日、紀井ディレクターのお話から多くを吸収し、活発なやり取りがそれに引き続きますこと、楽しみにいたしたいと思います。