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総領事のヒューストン通信 |
ヒューストン日本商工会年次総会(10月24日)での山本総領事挨拶
在ヒューストン日本国総領事 山本条太
大震災始め日本が数々の困難に直面した時期、上野会長始め先の執行部皆さまには、 当地日本人社会のあるべきまとまりを保ち、見せるべき姿を見せていく上で誠に大きなご尽力を賜りました。改めて御礼申し上げます。岡野会長始め新たな執行部の皆さまにも、この良き伝統の下、商工会益々の御発展を確保願えるものと確信しています。
日米の桜寄贈百周年に当たり、春先以来ヒューストンでも幾多の企画を重ね、パーカー市長、ヒューストン市議会、熊谷千葉市長始め多くの祝福を得ながら、先週ハーマンパーク日本庭園で桜の若木20本の植樹にこぎ着けました。その際、アメリカの数々の政治家から、お仕着せではないメッセージをもらいました。Goodwill, Cultivating Diversity, Our Bonds of Friendship & Cooperation, Japan-US Alliance as an Anchor, Most Important Economic Partner, Increasingly Intertwined Societies & Economies・・・・我らが大切にしたい多くの言葉が、そこに表れていました。
アメリカ社会の成り立ちの根本は、出身を問わず地元の価値を尊重し地元の一員として行動することかと思います。ヒューストンもテキサスも、誠にアメリカ社会の典型です。先輩先人多数のご尽力により、ハーマンパーク日本庭園は今や市民全体の憩いの場です。だから日本庭園を応援する。ヒューストンの人が何よりも大切にするのは文化的多様性ですから、それを応援する。美術館、テキサスセンター、音楽その他文化団体、それらを応援し、それをはっきり見せていく、そういうことかと思います。
地元民として地元の応援するものを共に応援することの一例が野球チームで、それを無理なく愉快にできるのは日本人であることの幸せです。勿論、アメリカの野球チームはどこも巨大な管理組織ですから、我らの応援を球団に見せ、交流につなげ、それをまた地元に見せていくには、相当の手立てと工夫と段取りが必要です。
実は私ども、テキサス・レンジャーズと元々強力なコネクションを持っていました。ダルビッシュ投手も加入したし本格的な交流に踏み出そうかと、しかし足掛かりを駆使しても一回失敗し二回失敗し、8月末の草の根交流サミットの機会にようやく、それもダラス・フォートワース日米協会、全米有数の実力を誇る日米協会ですが、連日の働きかけを尽くし日本人コミュニティも力を合わせ、ようやく交流行事の実施にこぎ着けました。アストロズとの関係は一から組立て中で、少しだけドアが開きかけました。地元の応援するものを地元民として応援する、その大切さの証を目指して更に頑張り、皆さんの力を仰げるところまで持って行きたいと思います。
「地元と一体」とは、日本や日本人という要素を消すことではありません。むしろ逆です。日本人として当地の文化的多様性に彩りを添え、もって一層の信頼を勝ち取ることができるなら、幸いなことです。一流のものを一流の場所で見せる必要があります。エキゾチックな好奇心に訴えるのも時々は必要でしょうが、テキサスでは中々それだけでは共同体を動かす力にはなりません。誰もが理解し感心しあこがれる、テキサス人やテキサスに暮らす人々にクールと言わせる、そういう日本の姿を見せて行く必要があります。
この週末、中国人ピアニストのランランがヒューストン交響楽団と共演し、観客を熱狂させました。同じ週末、アジア協会テキサスセンターでは日本の宝石、バレリーナの酒井はなさんと和太鼓の佐藤健作さんがドミニク・ウォルシュ・カンパニーと共演し、観客の興奮と共感とあこがれを引き出しました。我らは大がかりさでは中国のようには行きませんが、感動と共感を生み出す力では負けません。労力や神経さえ厭わぬなら、地元や現場ときめ細かくネットワークを張り、着実に発信し続ける力では勝ると思います。
私は新幹線の技術と能力と愛らしい姿かたちの総合力が大好きで、クール・ジャパンの一例としてイメージを売り込んでいます。ヒューストンを拠点に活躍する日本人宇宙飛行士も誠にクール・ジャパンの典型で、宇宙飛行士の皆さんには叱られるかもしれませんが、日本の大切な文化的財産でもいらっしゃる、そう思っています。
ところでクール・ジャパンの代表でありながら、当地で更に大きく鋭く紹介する必要が残るものがあります。日本商工会を中心とする日本ビジネスマン皆さんの姿です。日本や日本人の組織力、緻密さ、機動力、誠実さ、そしてアメリカへの愛情、それら全てを示していく上で、日本商工会というブランドの力を貸してもらえないだろうか、商工会の対外交流を拡大させ商工会ブランドの発信を増幅させるよう検討願えないだろうか、それが私のお願いです。やり方は色々で、Greater Houston Partnershipやアジア商工会との交流を徐々に拡大していくのも一つ、政治家その他要人を囲むビジネス懇談会を随時実施していくのも一つです。
そのことのメリットは、人脈構築、情報収集、情報発信、セーフティーネット、トラブルシュート、色々ありましょう。間もなく選挙が終われば、地元対策再吟味の必要はいずれにせよ生じます。クール・ジャパンの発信という少々感覚的な話で、それだけに当地でご活躍の皆さまには感覚的にはご理解願えるかもしれませんが、適切な言葉を拾い出し事実も添え、対外交流拡大の得失をお示しする努力はきちんと続けたいと思います。今日のところは一つの問題提起として受け止めていただけるなら、誠に幸いです。